里山讃歌

ALの小春と過ごす田舎暮らしを綴っています

晴犬雨読

詩人,萩原朔太郎が書いてましたが,5月の朝の新緑と薫風は私の生活を貴族にする,,,と。

 

奥久慈の里山は初夏の爽やかな天気が続いています。この爽やかな気候からか毎日眠くて眠くてたまりません。その眠さの隙を突いての読書タイム。寝るか読むかのせめぎ合い,,,

 

 

サン=テグジュペリ『人間の土地』

若い頃,「星の王子様」を読んだことがあります。記憶は薄れてしまいましたが,,,

作者のサン=テグジュペリは職業飛行士であり作家でもありました。この「人間の土地」は,八編のエピソードから成っていて,職業飛行士としての豊富な体験が鮮やかに描かれています。まるで,20世紀初頭に生まれたばかりの旧式複葉プロペラ機に乗って,今ほど破壊されていないフランス,スペイン,アフリカなどの大地や人の営みを,当時の大空という三次元の空間から眺めているようです。

 

しかし,この書の真価は,その飛行士としての体験やエピソードではなく,それらを語る上で描かれている「人間の本質」の探求にあると思われます。また,郵便飛行黎明期の貴重な資料としての価値といった側面もあります。

 

現代の飛行機交通網は,飛行機がこの世に出現してからのたくさんの犠牲の上に成り立っています。特にサン=テグジュペリの時代は,フランス郵便航路開拓と維持のために100名以上の死者を出したようです。戦争では大量殺戮兵器の筆頭としての役割を果たした飛行機。つくづく飛行機という乗り物は凶暴だ,,,と思います。

 

この「人間の土地」は,サン=テグジュペリが飛行士として,詩人として,哲学者として,これらの犠牲に意義を見出そうとしたのではないかと思います。久しぶりに読み耽ってしまいました。人生のいずれかのタイミングで一読すべき書物です。

 

 

夏目漱石『それから』

漱石の作品を時々再読しています。再読のたびに新たな気付きがあります。若い頃読んでもピンとこなかったものが,それなりに人生経験を積んだおじさんになった今読んでみると,その文体や言葉から深く考えさせられたり新たな世界観が広がったりと,再読の効能の恩恵にあずかることができます。じわじわっときますよ!

 

高校生以来の再読です。家が裕福なことから職に就かず30歳になっても自由気ままな生活を送る「高等遊民」という立場の代助。その生き方や考え方を自分の置かれた立場や現代社会の様相に照らし合わせながら楽しんで読みました。

 

高等遊民という造語,インテリでありながら,働かず,ふらふらしている人のことで現代で言う「ニート」に通ずる視点があります。ニートの中には,経済的な基盤は脆弱ですが,自分の好きなことや趣味に没頭し,その道においては深い知識や実践力を有する人もいます。「高等遊民」の代助も知識は豊富で芸術や文学に造詣が深く,裕福ではありますが,親や兄弟という経済力のはしごを外されてしまえば,ニートとそれほど変わりありません。

 

代助のニート的な生活はいいのか悪いのかはともかく,人間らしい心の豊かさを求めていることはあながち間違ってもいないと思います。現代でも然り。経済的には大きく成長して裕福になった日本。しかし,本当に日本は裕福になったのかと自問自答する日々です。経済的には裕福になりましたが心の豊かさや精神的という点では全くなってないように感じます。

 

話が飛躍してしまいましたが,夏目漱石は面白いです。時々読んでみて心豊かな生き方を考える一助となればと思います。

 

 

藤原正彦『この国のけじめ』

痛快です。日本人としての矜持を蘇らせてくれる著書です。また,読書疲れ?を癒してくれる一冊です。論理や市場原理に毒された日本の将来を憂いつつ,本来のあるべき姿の日本に戻る可能性を論じています。ユーモアをたっぷりと交えながら。とてもわかりやすい文章。グローバルスタンダードの時代に強烈な一石を投じています。

 

 

 

オーストラリアンラブラドゥードル の小春さん,快食,快便,快眠,とてもとても元気。食欲ありすぎで困っています。

 

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田んぼの水鏡。この季節ならではの美しさです。

 

 

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ジロ・デ・イタリアも終盤の戦い。上級山岳コースの連続です。

 

 

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散歩コースの辰ノ口親水公園。薔薇がきれいに咲きました。次は紫陽花です。

 

 

人間の土地 (新潮文庫)

人間の土地 (新潮文庫)

 
それから (新潮文庫)

それから (新潮文庫)

 
決定版 この国のけじめ (文春文庫)

決定版 この国のけじめ (文春文庫)