里山讃歌

ALの小春と過ごす田舎暮らしを綴っています

 硫黄島に死す

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城山三郎『硫黄島に死す』読了。

短編集です。「硫黄島に死す」「基地はるかなり」「草原の敵」「青春の記念の地」「軍艦旗はためく丘に」「着陸復航せよ」「断崖」,,,著者の戦争体験と深くかかわった短編作品7編が収められています。城山さんの小説は,個人の伝記を通して時代を語ることにたけています。この短編集も同様で,硫黄島の戦いで自決したロサンゼルスオリンピック馬術障害競技の金メダリストであるバロン西こと西竹一の短い生涯を生き生きと描く中で,戦時の悲惨な状況を語っています。いつもながら思うのですが,数多くの人々の体験から埋もれていた事実を掘り起こす城山さんの取材力は見事なものですね。短編最後の「断崖」は,城山さんにしては珍しい私小説風といいますか,作品の中で,気軽に時代を論じ,社会や風俗を批判しています。

戦後70年。硫黄島には,未だに,13000もの遺骨が,故郷に戻れずにいるようです。一刻もはやく,美しい野山や鮎泳ぐ川がある彼らの故郷に戻してあげなければと思います。